細い路地のど真ん中で
カマキリが怒り狂っていた
カマを振り上げ、羽根をいっぱいに広げて
踊るように体を揺らし威嚇している。
たしかに僕の方向に向けて。
僕は産まれて初めて、
カマキリにトウセンボされたのだ。
思い当たる節はない。
だいたい僕とは5,6メートルも離れているのに
威嚇が早すぎるんじゃないのか。
これでは待ち伏せをされているみたいで気持ちが悪い。
だいたい道のど真ん中にカマキリが立ちはだかるなんて見たことがない。
だいたい何ををそんなに怒っているのだ。
僕はただ歩いてきただけなのに。
疑問が多くて仕方がなかったのだが、
もしかしたら、
近くでコドモでも孵化して威嚇しているのだろうか、とも思い、
あたりの植え込みを少し覗いてみたがそれらしき形跡は発見できなかった。
原因がよく分からんので、
申しわけないが強行突破してしまうことに。
カマキリに言葉が通じるのであれば
通るだけじゃ危害は与えぬ、などと時代劇風であったろうか。
一応、気を使ったつもりで、カマキリをまたがず脇を通りすぎたわけだが、
雨にうたれ、体も弱っているのか、近くから見るとだいぶヨタヨタしている
キミドリの体色も随分とくすんでいるし、
広げた羽根の上に雨粒がまとわりついていて、
この羽根では当分飛べそうもない。
ずぶぬれで威嚇を続けるカマキリの姿は、
意味不明なだけ余計に力強く、それだけ生物の哀愁のようなものを感じる。
なんとか誤解を解いて肩を抱き合いたいぐらいだ。
そこまでは思わないけど。
少し離れてから、また振り返ってみると
まだ僕の方を向いて羽根を広げ、カマを振り上げていた
原因はさっぱりわからんが、とにかくかなり怒っているらしい。
そのうち、シャーとか、シューとか、
威嚇音とか発し出すんじゃないか、なんて気がしてきて、
しばらくしゃがんで耳をすました。
お金持ちの男の宝物は
大きな大きなツボ
立派でキラキラずずーんとしてます
手入れは女中さんにはまかせられません
休日に早起きして自分でやるのが至高の時間
よーく絞った布切れで
いつも丁寧にふきふきしています
ちり一つ残さずピカピカに
ある日、内側にほこりがたまっているのを
見つけたお金持ち
台の上に乗っかって 内側の掃除をしていると
足がすべってツボの中に落ちちゃった
すっぽり体が入ってしまったツボの中は真っ暗
簡単に中に入ったものの
内側からは出にくいつくりになっています
だれかー
助けを呼ぶ声もツボの中で反響するだけ
もがいているうちに
アタマだけなんとかツボの外へ
なんとか女中さんを呼びつけたものの
今度は首がはさまって身動きが少しもとれない
女中さんはツボからアタマが生えているような
妙な生き物を見て 大笑い
日頃のウラミを返しておこうと
デコピンを500発くらい決めてやりました
お金持ちは日頃から隙をみては
お尻をさわってくるスケベ親父だったのです
女中さんはデコピンも指が疲れたので
ザマーミロ、と言ってやりました
お金持ちはオデコを真っ赤に腫れさせながら
痛くて悔しくて情けなくて涙目です
すっきりして少しかわいそうに思った女中さんは
ご飯を運んでやり、スプーンでひとさじひとさじ
食べさせてやりました
お金持ちは女中さんがやさしくしてくれたので
せつなくなってしまいました
女中さんの小さなお尻が気に入っていましたが
もうさわることもできません・・
女中さんは その姿ではサワレマイと勝ち誇りましたが
お金持ちは 目の高さがちょうどお尻と同じ高さになって
じっくり眺めるにはちょうどいいわいと
負け惜しみをいいました
腹がたった女中さんは保健所に電話して
妙な生き物を引き取りに来てもらうことにしました
お金持ちは「ツボ男収容所」に運ばれることになりました
~つづく~
